『虞美人草』--夏目漱石が職業作家として書いた処女作の中国大陸版が刊行された。翻訳者はもちろん私だ。
夏目漱石以職業作家身分所寫的處女作--《虞美人草》中國版已經上市了。譯者當然是我。
この小説のストーリーは分かりやすいけれど、文章は本当に難解である。作中人物の会話は口語の体裁をとってはいるが、地の文は漢詩調の文語体。
這部小說的故事雖然很簡單,文章卻非常難懂。作品中的人物會話用的是口語體式,但情景敘述部分是漢詩風格的文言文。
一字一句までに腐心して書いた絢爛たる文体は、キラキラと輝く星空のようで、長く見つめると、目がくらむ。
字字句句都絞盡腦汁寫成的華麗文體,仿佛閃閃發光的星空,盯久了,會令人頭昏眼花。
翻訳者の視点と読者のそれはまったくの別モノだ。読者はストーリーだけを追い、ところどころ飛ばし読みしてもいい。翻訳者はそうはいかない。わずかな字句を見逃しただけで、ときにセンテンスあるいは段落全体を誤読するおそれがある。
譯者的視點和讀者的視點完全不同。讀者可以略過某些地方,光追著故事看。譯者卻不能這麼做。只要看漏幾個字,有時就會造成誤讀整個句子或整個段落的結果。
現代日本人が毎日ご対面するであろう千円札の文豪、そしてその彼が人生の岐路に書いた作品。
他是現代日本人大概每天都會碰面的千圓鈔票文豪,而且是他處於人生岐路時寫成的作品。
そう思ったからこそ、私も一字一句まで読み間違えないように苦心して翻訳した。
正因為如此,我也仔細地解讀每個字每個句子,費盡苦心地翻譯了這部作品。
漱石が漢詩文調でいくとき、私も漢詩文調でついていく。漱石が俳句で投げてきたら、こっちも俳句調で投げ返す。おかげで白髪がどっと増えたような気がする。
漱石以漢詩風格走筆時,我也以漢詩風格跟著走。漱石拋來俳句時,我也用俳句文體拋回去。害我的白髮好像突然增加許多。
中国大陸版の帯には、「村上春樹がもっとも心酔する古典的文学」と書いてある。中国の文豪である魯迅まで帯に登場。
中國大陸版的腰封上,寫著「村上春樹最心儀的文學經典」。連中國文豪魯迅也在腰封登場。
夏目漱石に村上春樹、そして魯迅。すごいメンバーだ。
夏目漱石加上村上春樹,以及魯迅。這陣容實在太有力了。
この作品は、おそらく翻訳者としての私の生涯最高傑作となるであろう。
這部作品大概會成為我的譯者生涯中的最高傑作。
そんなことを言ってたら、なんだかこんな答えが返ってきそうだ。
要是這樣說的話,恐怕會得到如下的回應。
村上曰く、やれやれ。(村上春樹の作中のトレードマーク。)
村上曰,唉呀呀。(村上春樹作品中的商標。)
漱石曰く、こんな夢を見た。(漱石の『夢十夜』のパテント。)
漱石曰,做了這樣的一個夢。(漱石的〈夢十夜〉中的專利。)
魯迅曰く、阿Qだ。(魯迅の代表作『阿Q正伝』の主人公。典型的な愚民。)
魯迅曰,真是個阿Q。(魯迅的代表作《阿Q正傳》中的主角。典型的愚民。)
ともかく、『虞美人草』が駄作であろうが傑作であろうが、みなさんに一度じっくり時間をかけて、最後まで読みとおしてもらいたい。おそらく、作中人物のだれかに自分を投影することによって、おのずと自分の心が見えてくるはず。
總之,無論《虞美人草》是拙劣之作或是傑作,我很希望大家花點時間仔細地通讀這本書。然後看你把自己投影在作品中的哪個人物,我想,應該會自然而然地看清你自己的心。
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